徹底解説!歯を失った時の治療法
〜ブリッジ編〜
メリット・デメリットから考える
歯を失ってしまった方へ
「虫歯が進行しすぎて、歯を抜くしかなくなった」
「転んで前歯が折れてしまった」
「歯がぐらぐらしていて、抜歯するしかないと言われた」
歯を失う理由は様々です。
抜きたくないのにどうしても抜かないといけなくなった、というのはとてもショックですよね。
今回は歯を抜いた後の治療方法のひとつ、ブリッジについてまとめました。
3つの治療の選択肢
まず、歯を失った場合の治療の選択肢には、以下の3つがあります。
①ブリッジ
失った歯の両隣の歯を削って支えにし、橋渡しの形で失った部分に被せものを装着します。
自分の咬む力を100とした時の、ブリッジの咬む力は60程度です。
②入れ歯
ご自身で取り外し可能な人工の歯を装着します。
自分の咬む力を100とした時の、入れ歯の咬む力は20程度です。
③インプラント
インプラントというチタンの土台を顎の骨に固定し、人工的に歯を増やします。
ご自身の咬む力を100とした時の、インプラントの咬む力は90程度です。
ブリッジとは?
このページでは治療法の一つである、ブリッジについて詳しくご紹介していきます。
ブリッジとは、歯を失った部分の両隣の歯を支えにして、連結した人工の歯を装着する治療です。
歯と歯を橋渡しするような構造の治療であることから、「ブリッジ」と呼ばれています。
ブリッジの
メリット・デメリットについて
ブリッジのメリット
①治療の期間が比較的短い
来院頻度によっても前後しますが、平均的なブリッジの治療期間は2~3ヶ月程度です。
一般的なインプラント手術の治療期間が半年~1年程度であることと比較すると、治療期間は短めになっています。
ただし当院で行うインプラント治療は最短2ヶ月で治療が完了するため、治療期間の面だけで言えばブリッジはそれほどの差がありません。
当院のインプラント治療についてはこちらから是非ご覧ください。
②費用を抑えられる
ブリッジは保険診療が適応になっています。
そのため費用を抑えて治療を行うことができます。
③手術の必要がない
両隣の歯を削り、被せものを装着するという治療であるため、手術の必要がありません。
④ある程度しっかり噛める、
違和感が少ない
入れ歯と比較して違和感が少なく、今までの感覚と大きく変わることなく食事をすることができます。
⑤【自費診療】セラミックなどの素材に
すれば審美性の高いものも作れる
自費診療にはなりますが、素材をセラミックなどにすることで、汚れが付きにくく見た目も自分の歯とは変わらないブリッジを作製することができます。
ブリッジのデメリット
①失った歯の両隣の
歯を削らなければならない
ブリッジとはその名の通り、橋を作る治療です。
そのためには失った歯の両隣の、支えにする歯(支台歯)を大きく削る必要があります。
現代の歯科治療は『できるだけ歯を削らないこと』を大切に治療しています。
なぜなら歯は削ると弱くなり、そこから虫歯になりやすいからです。
1本の歯の治療のために、両隣の2本の歯を犠牲にしている、というとイメージして頂きやすいかもしれません。
ブリッジという治療のために、たとえ何の問題もない健康な歯だったとしても、削る必要がでてきます。そして健康だったはずの歯が削ることによって、かなり大きな虫歯のリスクにさらされてしまいます。
②歯の神経を抜かないといけなくなる
場合がある
ブリッジの支えにする歯を大きく削ることによって歯の内側にある神経に刺激が与えられ、歯髄炎という症状が引き起こされることがあります。
歯髄炎は『歯の髄(神経)の炎症』なので、治療のためには歯の神経を抜く必要が出てきます。そうなると更に歯を大きく削らなければいけません。
また、神経を抜いた歯は、神経がある歯と比べて弱く、もろくなってしまいます。
例えて言うなら、元気な木と枯れ木に似ています。
元気な木の場合は多少枝に力がかかっても、しなるだけで元に戻ります。
しかし枯れ木は同じ力でもぽきっと簡単に折れてしまいます。
歯でも同じようなことが起こってしまいます。
③ブリッジの支えの歯に
大きな力がかかる
両隣の支えの歯は、ブリッジにすることで普通よりも大きな力がかかることになります。
お口の中を職場として想像してみてください。
今まで3人で働いていたのに1人辞めてしまったことで、3人分の仕事を2人でずっとこなさなければならなくなってしまいました。
最初は「少し頑張ればいいか」と思う程度のことですが、新しい人が入ってこなければ段々疲れがたまり、オーバーワークになってしまいます。
歯の場合はオーバーワークが続くと、歯の根が折れてしまったり、歯が割れてしまったりします。
特に②で説明したように神経を抜いている歯はもろく、割れやすくなっています。
そうすると最終的にはブリッジの支えにしていた歯もまた、抜かなければならなくなってしまいます。
④知らない間に
片方が外れていることがある
そしてこれがブリッジ治療の最も大きな問題点です。
ブリッジは知らない間に、片方が外れていることがあります。
歯は物を噛んだ時、ごくわずかに沈み込みます。
実はこれがブリッジが外れる原因になるのです。
公園にあるシーソーを想像してみてください。
板の片方に人が乗った場合、板の反対側は上にあがります。
ブリッジでも同じことが起こっています。
ブリッジの部分でものを噛んだ場合、沈み込んだ歯に合わせてブリッジが引っ張られ、もう片方の固定された部分にも力がかかります。
この力が同じ方向にかかってくれると良いのですが、残念ながらブリッジの場合は支えの歯に互い違いの力をかけてしまいます。
ブリッジに使われる素材は金属であれ、セラミックであれ、どちらも非常に硬い素材です。そのためシーソーと同じように、力がかかって沈み込んだ分と同じだけ、力がかからなかった方には反対方向に力がかかります。
この力のかかり方が、何かものを噛むたびに、1回1回、常に起こっています。
するとどうなるでしょうか?
しっかりと接着していたブリッジが、いつの間にか外れてしまうのです。
そしてこの外れたブリッジの下の全く見えない部分で、虫歯が進行してしまいます。
ブリッジは少なくとも2か所で固定しているため、片方が外れているからといってぽろっと外れることはありません。
気づかない間に外れ、気づかない間に虫歯になり、気づいた時にはもう抜歯するしかない、ということになってしまいます。
これは残念ながら自費治療のブリッジであっても同じことです。
どんなに精密に治療したところで、力のかかり方を変えることは出来ません。
力のかかり方によって接着が外れてしまう、というリスクに関しては保険治療も自費治療も差はありません。
⑤約70%ものブリッジが10年の間に
『再治療が必要』と言われている
詰め物や被せものなどの歯の治療についての研究は、今までに沢山行われています。
その中でブリッジは平均寿命が約7年と、詰め物や被せものの中で最も短いことが分かっています。
また10年使えるブリッジは推定で約30%程度という調査結果も出ています。
ブリッジ治療をした方の実に70%が、10年以内に治療のやり直しが必要になっているということです。
再治療の原因として最も多いものが、支えの歯の虫歯によるものでした。
(参照:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh/58/1/58_KJ00004846513/_article/-char/ja/)
⑥ものが挟まる、隙間が出来るなどの
不具合が出てくる
ブリッジは入れ歯と比較すると違和感の少ない治療ではありますが、元々の自分の歯と比べて全く違和感のない治療ではありません。
特に歯がない部分の被せものの下には物が詰まりやすいなどの不具合があります。
また歯がない部分の歯茎が痩せてきた場合、ブリッジと歯茎の間に目で見て分かるほどの隙間が出来ることもあります。こうなってくると見た目にも悪く、またしゃべる時に息が抜けてしゃべりにくいなどの不具合も出てきてしまいます。
ブリッジはこまめな手入れが必要!
ブリッジに手入れが必要な理由は?
ブリッジは歯がない部分の被せものの下に、食べ物が詰まりやすくなっています。
特別なお手入れをしていなければ、両隣の支えの歯が虫歯になってしまったり、歯周病の原因にもなります。
自宅で出来るブリッジの手入れ方法
ブリッジの隙間に入るサイズの歯間ブラシで、丁寧にブラッシングをして下さい。
またブリッジ用のフロスなどを使用して頂くのも有効です。
定期的な検診も必須
きちんと清掃できているかのチェックはもちろんですが、ブリッジの支えの歯に問題がないか、歯周病になっていないかどうかなど、定期的な確認が必須となります。
ブリッジ治療に向いている人は?
ここまでブリッジのメリット・デメリットや気を付けるべきことなどをご説明してきましたが、ではどのような方にブリッジ治療が向いているのかご紹介します。
どんな人・どんな場合に
ブリッジ治療はおすすめ?
①外科的な治療ができない方
患者様の持病やお身体の状態から、外科治療が出来ない場合にはブリッジ治療をご提案する場合があります。
ただし一般的に外科治療が難しいとされる場合であっても、かかりつけ医と相談の上問題なければ、治療可能な場合もあります。
②下顎の前歯など歯と歯の間が
狭い部分の歯を失った方
下顎の前歯の部分は歯自体が小さく、そのため歯と歯の間隔が非常に狭いです。
インプラント治療を行うには隣の歯との間に適切な距離を取る必要があるのですが、患者様によってはその距離が十分に確保できないこともあります。
その場合はインプラントを入れることが出来ないため、ブリッジでの治療をご提案させて頂きます。
③ブリッジの支えとなる歯が
既に削られている場合
既に土台となる歯が虫歯治療などで削られている場合であれば、健康な歯をいちから削るよりはデメリットが少ないと考えることもできます。
とはいえ支えの歯が虫歯になるリスクや、割れてしまうリスクがなくなるわけではありません。
むしろ連鎖的に隣の歯を失う可能性が高くなることを充分考える必要があります。
ブリッジで対応できない
場合はある?
ブリッジは失った歯の両隣の歯を支えにして、人工の歯を固定する治療です。
ですので基本的に支えの歯がなければ、治療することが出来ません。
例えば下の奥歯2本を抜かなければいけなくなった場合、そこにブリッジで歯を作ることは出来ません。
当院のブリッジに対する考え方
結論から申し上げると、ブリッジ治療は基本的におすすめをしていません。
失ってしまった歯を補うための治療として考える場合、ブリッジはメリットをデメリットが上回ってしまいます。
歯を失った場合の3つの治療の選択肢(インプラント・入れ歯・ブリッジ)のうち、インプラント治療が出来ないのであれば、入れ歯治療をおすすめしています。
また歯を失った部分をそのままにしておくのも決して良くはないのですが、ブリッジにするくらいならまだ何もせずに置いている方がまし、とまで言ってしまってもいいかもしれません。
それほどまでにブリッジは、残された歯に大きく負担をかける治療方法です。
「どうしても入れ歯では咬みにくい」
「歯がないのは見た目が絶対に嫌だ」
など、もうどうしようもない場合であれば、リスクを充分に理解したうえで選択するようにしてください。
ただし、ブリッジにすることでさらに歯を失うリスクは上がります。
もしそうなった場合、将来再び、考える範囲が広がった『歯を失った部分をどうするか』という問題に向き合わなければならないということを、心に留めておいてください。
また治療可能な部位は限定されますが、以下の方法であればデメリットの少ないブリッジ治療が可能です。
下顎の前歯のブリッジ
下顎の前歯に関しては、ブリッジ治療を行っても問題ありません。
下顎の前歯は噛み合わせに大きな負担がかかりにくいため、通常のブリッジ治療でも問題が起こりにくいです。
メリーランドブリッジ
メリーランドブリッジとは、歯を失った部分の、隣の歯の裏側に接着して固定するブリッジです。
セラミックは素材の性質として、歯と強く接着することが出来ます。
それを利用して1本の支えの歯の裏側に、ブリッジの一部を接着するだけで固定することが出来るため、シーソーの例えでお話したブリッジ治療のデメリットがありません。
また支えの歯を削る量も通常のブリッジと比較して圧倒的に少なく、支えの歯に負担をかけません。
自費治療であり、治療可能な部位も前歯だけにはなりますが、ブリッジ治療の中では唯一おすすめできるブリッジです。
まとめ
歯を失った際の治療法にはいくつかの選択肢がありますが、ブリッジ治療はその中でも一長一短がある方法です。
特に、失った歯の両隣を削らなければならないため、健康な歯にリスクを与える可能性が高いことが大きなデメリットとなります。
また、ブリッジ治療は将来的に歯を失うリスクを高める可能性もあるため、その点を十分に理解し、慎重に選択する必要があります。
もし、ブリッジ治療を選択する場合は、必ず医師と相談し、自分の状況に最も適した方法を決定することが大切です。
もしご不安な点があれば、当院のスタッフがしっかりとサポートいたします。
下部のラインアイコンからも治療相談が可能です。どうぞお気軽にご相談ください。